一般住宅の1階を喫茶店にする計画である。
施主からは店舗のデザインがこの喫茶店の一番の売りとなるような、道行く人々が思わず入りたくなるような魅力的なデザインを求められた。
また施主の好みは南仏風ということであった。
コストの問題もあり、床など残せる部分は残していった。全体は漆喰で塗装し、疑似ではあるが梁などを付けそれらしく装飾していく。
いわゆる現代建築からは外れるインテリアデザインではあるが、楽しくデザインさせてもらった。
このような空間は、建築士サイドだけでは完成しない。家具選び、装飾小物選び、果てはメニューデザインまで、全てが細やかに選ばれてこその空間である。
依頼からオープンまでたった3ヶ月の計画ではあったが、非常に密度の濃い打ち合わせと協力体制が実現し、このレベルでの完成に至った。これは私としてもとても有意義な経験となった。
カウンター天板は無垢のフローリング材を加工して制作した。照明もテーブルもソファもインターネットによる直売でコストと工期をギリギリまで詰めている。
ただし厨房の商品は今後の耐久性や保証を考え、全て新品で揃えている。
完成した店内はジャズなどの音楽が流れ、ゆっくりとくつろげる居場所になっている。
喫茶店においては外構デザインも大きなイメージとなる。施主の多大な努力もあり、練馬の街並みの中で良い意味で異質な空間が作れたと思う。
今では街の隠れ家的カフェとしてとても愛されていると聞く。
この景観を維持してくれる施主と、好み足を止めていってくれる人々に感謝の気持ちが絶えない。
Data.
所在. 東京都練馬区 竣工. 2016年5月 用途. 飲食店 設計者. 相馬 均