埼玉県川口駅近くの新築住宅である。
元々は比較的大きな工場があった場所を、工場の閉鎖ののちに区画を整理し住宅分譲地とした。その一番奥の土地に建てる計画である。
公道から位置指定道路が作られ、さらにそこから敷地延長されたかなり奥まった土地である。
そこに二世帯住宅を計画した。
建物は敷地いっぱいに拡がるように計画した。図面左上に庭の入り口があり、その庭を歩けば2つある玄関のどちらかにたどり着く。
庭に向かって玄関土間や縁側、吹き抜けなどの無用途な空間が配置してあり、その空間が各室と庭との関係を少しづつ変化させている。
園芸好きな施主が庭を成長させると共に室内の様相も少しづつ変化するような、そんな空間を目指している。
初期の計画段階では、大まかなゾーニング時点ではLDKや各室は整形であったが、現実の敷地や隣の部屋との関係の中で少しづつ形を変えていった。
結果出来上がった空間は梁の見える高天井ともあいまって、不整形な連続性を感じるものとなっている。
2世帯住宅という要望に対し、「距離感」というものをテーマにしたところがある。
各室はドアで直接繋がるのではなく、玄関の吹き抜けであったり、土間であったり、時には収納を介して緩やかに距離をとっている。各部屋は可能な限りオープンな建具によって吹き抜けや土間と繋がり、閉鎖的にはなっていない。
2階も1階も同様に梁を見せるデザインになっているが、2階であることで小屋組みが見えている。
特殊な工法は一切なく。ただ天井の位置を梁上に持ってきただけではあるが、解放感は大きかった。
今回の計画は自分なりに、庭と建物の関係をどうとるかをよく考えて出した答えであった。
特別な工法や高額な商品は何も使っていない。通常の木造住宅の工法を使い、吹き抜けや土間などの要素を繋げていくことで拡がりのある空間を求めた。
結果として二世帯住宅としてちょうどいい「距離感」がある住宅になったと思う。
Data.
所在. 東京都立川市 竣工. 2020年9月 用途. 専用住宅 設計者. 相馬 均