
郊外のある住宅のリノベーションである。
施主はDIYを得意としていて、自身で出来ない部分のみのリノベーションを依頼された。
そのため互いの意見を多く交換しあいながら、とても長い期間の計画となった。最初に話をもらってから数年にまたがる工事期間であった。


好みのインテリアスタイルは施主によって様々ではあるが、今回はブルックリンスタイルやインダストリアルインテリアに近い方向で行くことになった。特に建具の検討は確認作業にかなりの時間を費やした。
施主希望のインターネットでの直売商品は驚くほど安価で、メーカー既製品では出せない味があったが、注文方法や受け取りは融通がきかず苦労する場面もあった。

郊外と都市近郊では土地の面積価値が大きく違い建物面積も大きいものが多いが、建物内の部屋に対する面積の割り当ても大きく違うというわけではない。LDKサイズは都心でも郊外でも12畳程度であるし、部屋のサイズも6畳~8畳である。
つまりただ部屋数が多いというだけである。それでは郊外の持つ利点を活かせていない。
それをふまえ今回のリノベーションでは、郊外の面積的利点を活かし、あえて玄関廊下や洗面所などのスペースに余裕を持たせる計画としている。


都心ではLDKに面積を少しでも割こうとするので、広い玄関や広い廊下はなかなか望んでも実現しずらい。
玄関はともかく廊下などは無駄なスペースととらえられやすく、なるべく少なくすることが建築士に求められる。
しかしここで実現した広い廊下や玄関は、無駄なスペースには全くならなかったと思う。空間的に拡がりが感じられ、確実に住空間の快適さに一役かっていた。


そもそも玄関廊下や洗面所というスペースは、住人の誰もが等しく使用するため混雑しがちである。そのスペースを広げるだけで生活様式は大きく変化すると言っても過言ではない。この家のリノベーション後の洗面所は、そこにいる時間を想像するだけで楽しくなる。
現代の住宅の形式の多くは都心型住宅のモデルを郊外の住宅にも適用している。その画一的な住宅モデルを一旦捨てて、地域や敷地、家族構成、施主の要望にそって空間を再構築することがリノベーションの面白いところである。
Data.
所在. 群馬県伊勢崎市 竣工. 2020年6月 用途. 専用住宅 設計者. 相馬 均