鎌倉市二階堂でリノベーションの依頼を受けた。2階のLDKを拡張する工事である。
木造軸組工法住宅のリノベーションの中で、天井裏のスペースをどう有効利用するかは常に課題となるが、今回は天井の高さを限界までとる方向で話がまとまった。
ただ和小屋の母屋や束をそのまま見せていいものかと少し悩んだ。建築金物も見えてしまうし、配線を動かすことも一苦労である。しかし梁や金物のうるささが逆に面白いのではないかと思い、そのまま進めることにした。
天井を落とし梁を見せるということは決まっていたが、その他の細かい部分は決めずに施工に入った。
いくつかあった部屋は全てLDKの1部屋にする予定でいたが、途中であえて1部屋残し子供部屋として上にロフトを作った。都度皆で案を出し合って進めていく様はアドリブの多いジャズセッションに近いかもしれない。
取り払えない柱も筋交いも多く、当初想定していたより構造体は多く残ったが、それでも天井を取り払った解放感は大きかった。
また解放感だけではなく、壁や天井で人のいる場所のルールを規制することが建築の意味の一旦だとすると、このリビングは前住人のルールを残った構造体から緩やかに感じつつ新しいルールを作っていく。そこにリノベーション建築の面白さや可能性を感じる。
リノベーションは既存住宅の「使える空間を探し、使い切ること」で新たな価値を創造することが可能だと考えている。その意味でこの家では確実に、既存状態の空間より前に進んだ空間の創造ができたのではないかと思っている。
Data.
所在. 神奈川県鎌倉市 竣工. 2019年6月 用途. 専用住宅 設計者. 相馬 均